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ゲーム考察:CEROについて正確に理解するため自分向けにまとめた資料

ゲームをそれなりに遊んでいると、それなりにCEROの話を聞くと思う。

 

だが、CEROの理念や行動原理、インタビューまで読み込んでいる人は案外少ないと思う。自分も(CERO議論への興味が薄いこともあり)あまり積極的にしていなかった。

ただ、それだとよくないなあと思い、ちょうどブログも持っているのでまとめておく。あくまでまとめ、かつソースがインターネットにあるもののみ。斬新な提案とかはないのでご容赦を。

 

www.cero.gr.jp

↑「CERO」で検索するとバンドなども引っかかるけど、今回はこのCEROの話。

1. CEROとは?

2014年に4GamerにてCEROへのインタビューが行われている。またCEROを関連団体として持つCESAのインタビューも確認できる。公式ホームページとインタビューから、CEROはどういう組織なのかを読み解いていこう。

www.4gamer.net

www.cesa.or.jp

 

CERO発足は2002年6月、審査開始は10月。既にアメリカで運用されていた「ESRB」を参考に立ち上げた、と述べられている。

設立理由は社会からの風当たりの強さ。「ゲームが青少年に悪影響を及ぼす」という風潮について、ゲーム業界の姿勢を明確にするためだったという。このあたりは海外で問題になった事情も込みだろうが、今回の本題ではないので省略する。ひとまず、どんなに悪く考えても、CERO設立当時はCEROに相当する機関が必要だった、という理解でよさそうだ。

 

 

2. CEROの基本システムについて

公式HPを見ればCEROのシステムはある程度わかるが、CEROの金額や手続きなどの詳細は、ゲーム販売元としてCERO接触する必要があると思われる。

ゲーム会社からCERO審査の詳細が語られたことも特にないため、インディーとしてタイトルをリリースしている人の、Twitterなどの文章もソースにすることにする。個人の呟きがソースとして弱いのは重々承知だが、今回の記事では少しでもCEROについて理解するため取り扱う。

 

 

2-1. 審査員は一般から広く募集。審査項目は27項目(非公開)、オフィスに来訪して行う。

上記は公式ホームページやインタビューで公開されている内容。なお、ここでいう「一般」はゲーム関係者を除くらしい。CEROの役割を考えれば当然だろう。

審査項目は全27項目。前章で引用した4Gamerが行ったインタビューによると、項目は「性表現系」「暴力表現系」「反社会行為表現系」「言語・思想関連表現系」から約30項目(公式とすり合わせたところ、これが厳密には27項目なのだろう)。詳細について、インタビューでは一般公開も考えていきたいと述べているが、現状非公開のまま。

審査内容としては、メーカーから提供された15~20分の映像を3名が確認、映像の内容と審査基準のリファレンスを照合して審査を行う。3名の審査が揃わない場合、多数決または再チェックを行う。なお実際にプレイするのではなく映像審査をとっている理由は、インタビュー曰く「ゲームの本数やボリュームの問題で時間面が難しく、現実的ではない」とのこと。CEROからも述べられている通り、メーカーとCEROの信頼関係で成り立っている仕組みのようだ。

 

 

2-2. CEROの審査料は「開発機材と合わせて月給3ヶ月分」、電子決済はない。

投稿者の「月給3ヶ月分」の感覚がいくらぐらいなのかがわからないため、ここから逆算するのは難しい。そこで、別の方向から考えていく。

Nintendo Switchの開発機の価格については、過去「Game Creators Conference 2017」のセッションにて、5万円程度だと語られている。セッションでは「Switchの開発機は安価」という話があることから、開発機の価格は一定ではないことがわかる。該当のツイートはSwitch発売前。NAN-A氏(INSIDE SYSTEM)の開発歴から、ニンテンドー3DSの開発機の価格を基準にして語っているのでは?と想像がつく。

ただ、ニンテンドー3DSの開発機の価格は正式な場・Twitterのいずれでも見当たらなかった……

jp.gamesindustry.biz

 

そこで、CERO設立時に参考にした北米レーティング「ESRB」から金額を推測してみる。

元ゲーム会社勤務「くねくねハニィ」氏の記事によると、ESRBの審査料金(2007年当時)は30万。価格変動するようなので引用した2017年の価格は不明だが、それぐらいの値段はする、ということだろう。

2007年当時のESRBと同価格なら、CEROの価格は30万円、ということになるだろうか(10年前のアメリカ審査機関と今の日本審査機関が同額とはとても思えないが……)。

nlab.itmedia.co.jp

電子決済の手段がないのはCEROの明確な欠点その1だ。

なお、ESRBは2012年より、デジタル販売するゲームならば無料で取得できる手段を提供している模様。

www.esrb.org

 

 

2-3. CEROに映像を提出する際はDVD。その性質上、郵送になると思われる(2020年まで、既に改善済)。

ツイート投稿時(2018年)にもなってDVDは不便極まりない。先述した「くねくねハニィ」氏の記事によると、2007年当時のESRBもDVDだった模様。ESRBがいつからオンラインになったのか正確な年はわからなかったが、以下の記事を読む限り、少なくともCEROよりは早かったようだ。

automaton-media.com

なお、CERO新型コロナウイルス感染拡大後、2020/07/01よりオンラインに対応したと「AUTOMATON」を通して明らかにしており、既にこの問題は解消したようだ。CEROの明確な欠点その2だった、と過去形で呼ぶのが正しそうだ。

automaton-media.com

 

2-4. CERO審査は移植でもプラットフォーム毎に費用が必要、依頼者が異なる場合は移植にならない。

こういうシステムらしい。柔軟性はないが、無難ではある。

ただ、プラットフォーム毎の費用請求は(大企業はともかく)インディーには厳しいものがある。一部タイトルがSwitchやPS4にしか出ない理由として挙げられるだろう。

 

 

3. CEROの問題点として挙げられる部分の考察

さて、ここまでの情報をもとに考察に入る。

CEROについて語られる場合のほとんどは、現在のCEROに対する何らかの問題提起だと思う。集めた情報をもとに、CEROが原因としてよく挙げられる問題がどれほど現実に即しているのか考えてみたい。

 

 

3-1.CEROの審査料が原因で、海外産のゲームが日本に来ない。

前章より、CEROの審査料は「2007年当時のESRBと同じなら30万円」と想定される。

30万円というと、例えば1000円のインディーゲームなら300本売れなければCERO代すら回収できない価格だ。低価格なタイトルが多いインディーゲーム界隈において、日本発売の敷居が上がるのは間違いないだろう。

 

なお、Nintendo Switchは2020年10月、Xbox Oneはそれよりもずっと前から、CEROだけでなくIARCレーティングによるタイトルも受け付けるようになっている。PlayStation 4は2021/09現在IARCレーティングは受け付けていないため「全ハード対応」にはまだ届いていないが、少なくとも「CERO審査避け」はできる環境になった。

automaton-media.com

 

IARCレーティングは無料での審査が行えることがわかっている。

Nintendo Switchソフトリリース本数について個人ブログ『絶対SIMPLE主義』を参考にしたところ、IARC解禁前の「2020年8月」は「8.625」本、解禁後の「2021年8月」は「20.25」本。Nintendo Switchが国内で普及していること込みで考えても、タイトル数の増加が著しい。

www.4gamer.net

www.simplelove.co

パッケージタイトルに関しては、少なくとも任天堂は引き続きCEROレーティングのみのようだ。このルールがある限り、任天堂ハードでもパッケージタイトルに限り、依然「CERO審査避け」は不可能、日本発売の敷居は変わらないと思われる。

www.nintendo.co.jp

 

ここまでCEROが原因で日本に来ない理由を考えてみたが、注意点として、日本に海外産のゲームが来ない場合、CERO以外に理由がある場合もある、というのは記載しておきたい。

「そもそもメーカーが日本リリースする気がない」も勿論あるだろうが、具体的に壁となるのは「ローカライズ」だ。日本語ローカライズはフォント問題や、英語と異なり日本語が2バイト、禁則処理(「。」が文章の最初に来ないようにするアレ)問題など、日本語ローカライズ自体にそれなりの壁がある。そのため、すべてのタイトルが「CEROの審査料」が原因であるとは言い切れない。

とはいえ、IARC解禁後に国内で出たタイトルは、その多くが日本語ローカライズを行っている(翻訳の質やフォントについてはさておく)。CEROが壁としてあったことは間違いないだろう。

www.4gamer.net

blog.ja.playstation.com

まとめると「CEROの審査料は日本に海外産のゲームが来ない要因と思われるが、日本語ローカライズ問題もありすべてとは言えない。ただ、CEROが原因で日本に来ないタイトルがあったのは間違いない」となるか。

 

 

3-2.CEROのせいで、海外産のゲームにある演出が規制された。

印象深い規制といえば2015年発売の「アンティル・ドーン 惨劇の山荘」だろう。本作はいくつかのシーンにて『完全に暗転する』手法が取られており、当時「ファミ通」など国内大手ゲームメディアからも低評価点として挙げられている。

『Until Dawn(アンティル・ドーン) -惨劇の山荘-』プレイインプレッション−−雪深い山荘に集まった8人の若者たちの身に巻き起こる惨劇の一夜を体験 - ファミ通.com

【PS4ゲームレビュー】Until Dawn -惨劇の山荘- - GAME Watch

 

この暗転についてはCEROが規制した結果なのか、それともメーカー側の自主規制なのかは調べようがない。が、1章で引用したCEROへのインタビューより、この規制に関しては「CEROと業界団体が決めた」ことが明言されている。CERO側かメーカー側かははっきりしないが、いずれにしても業界基準があるようで、仮にCEROがなくても何らかの規制がかけられる可能性はあるだろう。

なお、CEROはインタビューで「規制ではない」と主張しているが、CEROと業界団体が決めた方法に従わず(=CEROレーティングマークを取得せず)、ゲーム機向けにゲームを販売する手段が(Switchでは2020年まで)なかった以上、実質的にCEROの規制である、と判断して考察している。

 

ただ、2014年のゼニマックス・アジアへのインタビューにて気になる内容が語られている。日本市場では、CERO「Z」よりもCERO「D」のほうが売りやすい、とのことだ。

なぜCERO「Z」は売りづらいのか?これはCEROのレーティングのうち、Zのみ扱いが異なることが原因だと思われる。CEROを関連団体として持つCESAは、CERO「Z」のタイトルについて、販売する際に年齢確認を行うことや、陳列時に他のタイトルとは区別することを「業界のルール」として提示している。また、メーカーのプロモーションに関しても指示が入っており、CEROA~Dと「Z」は扱いが異なることがわかる。

www.4gamer.net

https://www.cesa.or.jp/uploads/guideline/manual_p.pdf

https://www.cesa.or.jp/uploads/guideline/cm-guide01.pdf

 

また、ゼニマックス・アジアへのインタビュー当時はあまりなかったが、テレビ番組での扱いもレーティングによって異なるようだ。「ゲームセンターCX」の放送作家として有名な岐部昌幸氏は、CERO「D」なら深夜番組でも取り扱えるが、CERO「Z」だと深夜番組でもほぼ取り扱えなくなる、避けておこうという空気がある、と語っている(ただし、局や番組のジャンルによって例外は発生するとのこと)。

ここまでの内容から、元々のまま発売するとCERO「Z」になり得るタイトルが、メーカー側が市場での扱い方を気にした結果、自主規制を行いCERO「D」で発売するケースは想像がつく。この場合はCEROの規制ではなく、メーカー側の販売都合による規制である。

qjweb.jp

 

まとめると「規制についてはCEROの規制とメーカーによる自主規制の2つが存在するため、規制=CEROが原因とは言えない。CEROには禁止表現が設けられているため、CEROの規制により表現が抑えられるケースはあり得る。また、メーカーがZだと売りづらいため、レーティングを下げるために自主規制するケースもあり得る」といったところか。

 

 

3-3 審査内容が非公開のため、CEROにメーカーが振り回される/CEROを信頼できない。

CEROの審査に関しては一般に公開していないことがわかっているが、メーカーに審査詳細が公開されているのかは不明。

CEROを信頼できない」については他項目も込みだと思うので一旦保留。

 

 

 

4. メーカー側がCEROに関連して起こした問題について

前章では「CEROの問題点」を考察した。だが、ゲーム会社側はCERO審査で問題を起こしていないのか?というと、残念なことに結構起きている。しかもCERO公式で確認できる限り、年に1回は起きている……。

 

4-1 レーティング審査箇所漏れ

2011年にガストが発売した「メルルのアトリエ~アーランドの錬金術士3~」はレーディング「A」だったが、発売後に未審査箇所が発見され「B」に修正された。

www.4gamer.net

また2019年にヒューネックスが発売した「ALIA’s CARNIVAL! サクラメントプラス」も、レーティング「D」として発売されたが、発売後に未審査箇所が発見された。

www.cero.gr.jp

これらのパターンで最も大規模な例は、2020年にユービーアイソフトが発売した「アサシン クリード ヴァルハラ」だ。

国内版の流血表現が抑えられていることが判明した結果、ユービーアイソフトは「国内で販売できないため関係各所と協議した結果」と告知。インターネットではCEROに批判が集まったが、CEROは「一切連絡も協議も受けていない」と告知。その後ユービーアイソフト内部の問題で、CERO審査後に修正をかけて販売したことが判明。未審査版を販売したとしてCEROが再度告知を出すこととなった。

ubisoft.co.jp

www.cero.gr.jp

www.cero.gr.jp

 

これが起きるのは、CEROが「映像審査」をとっているためである。1~2章でも説明したが、ゲームソフトが多すぎるためプレイしての審査は困難とのことで、CEROはメーカーから「審査が必要と判断した箇所を録画した映像」を受け取って審査を行っている。

1章で提示したインタビューでCERO側が述べている通り、このシステムはCEROとメーカーの信頼によって成り立っている。メーカー側で「提出すべき箇所が漏れていた」「故意に提出しなかった」を防止できない限り、これらの出来事は定期的に起きるようだ……。

 

 

4-2 レーティング未審査

珍しい例として、2018年のカプコンが起こした問題がある。

TGS2018でカプコンが配布した、新作映像が入ったディスクに「D」のレーティングマーク入りの「BIOHAZARD RE:2」の映像が含まれていたが、CEROは未審査だった。

4-1と似た問題のように見えるが、こちらは審査していないのにレーティングマークが入っているため、4-1で起き得る「うっかり映像から漏れた」がありえない故意の事件である。

「TOKYO GAME SHOW 2018 CAPCOM SPECIAL Blu-ray DISC」におけるレーティングマークの表示について

 

 

 

5. IARCの欠点

ここまではCEROの欠点について述べてきたが、対するIARCの欠点は書いてこなかった。それではCEROに平等ではないので、IARCのわかっている欠点についても記載する。

 

5-1 審査中/リリース後のレーティング更新が響く

IARCは簡単な反面、リリース後にレーティングが自動的に更新され対象年齢が変動、それが原因となって提供が強制的に止まるプラットフォームがあるとのこと。

 

また、アンケートが主観的なもののため、判断に困る点も欠点として挙げられている。

 

現在の調査はここまで。理解が増えたらまた更新しようと思う。